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『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002年)

 

監督:スティーブン・スピルバーグ 出演:レオナルド・ディカプリオトム・ハンクスクリストファー・ウォーケン

1960年代のソール・バスの映画のタイトルバックを思い起こさせる、洒落たデザインのタイトルバックで始まる。他にも挿入される音楽やファッションなど、随所に60年代のアメリカン・ポップカルチャーの雰囲気を採り入れることで、いい意味での「軽さ」とコミカルさを演出している。

ディカプリオはやっぱり演技がすごく上手い。実年齢より10歳ぐらい若い高校生の役だが、違和感ない。『ブルースが聞こえる』のマシュー・ブロデリックも10歳近く若い役を演じていたが、やはり童顔で細身という共通点がある。

ディカプリオが演じるフランクJrと、ウォーケンが演じる父親フランクとの共演場面は劇中何度もあるが、二人のやりとりや視線の見合わせ方、二人の間に醸し出される空気が素晴らしく、まさに本当に父子であるかのようだ。それもかなり仲のいい父子だ。二人ともドイツ系の血筋が入っているという共通性もあるせいか(ウォーケンの方がもろゲルマン系だが)、容姿的にも、そんなに無理がない。

二人が共演している場面はどれも印象深く魅力的だ。例えば、高校の代理教師のフリがバレて校長室の外で待つディカプリオと、校長室から出てきたウォーケンが無言で見つめ合ったあと、歩き出し、また顔を見合わせてどちらからともなく笑顔になる一連の場面は、この父子の間にある理解と愛情、そして息子のこのハッタリをかます性格がまさしく父親譲りであることを端的に表現している。この時の二人の笑顔がとてもいい。

他にも、「俺の息子の誕生日を、俺が忘れていたとでも?」と言うウォーケンを、パンケーキを焼く手を止めて、無言で見つめ返すディカプリオの何とも言えない微妙な表情。「ムカデに靴のセールスでもするのか?」というウォーケンのジョーク(これはもしかしてアドリブだろうか?)に思わず吹き出すディカプリオとウォーケンの仲の良い父子ぶり。いい場面を書き出したら、全部の場面になってしまう。

スピルバーグ監督とウォーケンの組合わせは意外感があるが、ディカプリオがウォーケンの起用を希望したという話もある。本当だろうか。だとすると、やはりディカプリオはセンスがある。この父親フランクは普通の善良な父親というより、ひとクセある風変りな父親である。ウォーケンが演じることで、どこかうさん臭い、不可解なところのある人物としての雰囲気が醸し出されて、そこに、このキャスティングの妙がある。

見どころ①父親フランクが一番成功していた頃の、ウォーケンのダンスシーン。ディカプリオに見せる、これ見よがしのドヤ顔がいい。

見どころ②落ちぶれた父親フランクと息子フランクが大衆的なダイナーで再会する場面。後ろから声をかけたディカプリオを振り返った時のウォーケンの表情と、その後の長い沈黙、すれ違った会話。この時の父親の心理や状況を、短い時間で鋭く表現している。

俳優の仕事にストイックなまでに集中しているという点で、ウォーケンとディカプリオは共通するものが感じられる。ハリウッド・スターはある程度成功してくると、レストラン経営など副業を始めたり、あるいはプロデュース業に手を拡げたりと、俳優以外のこともやり始める人も多いが、この二人は全然そういうところがない。ディカプリオは少し製作などにも関わることがあるようだが、少なくとも、ウォーケンの方は「演じる」ということに徹しているようで、本人も「趣味もないし、旅も好きじゃないし、人付き合いもしない。休みの日は家にいるよ」と言ってるくらいで、すごいストイックだ。

インタビュー記事によれば、ウォーケンは一日一食(夕食のみ)で、食べる量も少ないらしい。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン [DVD]