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『コミュニオン』(1988年)

原題:Communion

監督:フィリップ・モーラ 原作・脚本:ウィットリー・ストライバー

出演:クリストファー・ウォーケン、リンゼイ・クローズ、フランシス・スターンハーゲン

すごいカルト映画だ。といっても、一応「実際に起こったこと」を基に制作されているので、関係者はカルト映画を作る気はなかったかもしれないが。

原作者であるストライバーが、宇宙人にアブダクト(誘拐)された際の経験を再現しているらしいが、その経験がかなりぶっとんでいる。アマゾンやネットでの、この映画に対する評価は散々だが、原因の一つは宇宙人の造形の安っぽさだろう。登場する宇宙人は主に二種類。一つめは、昔、テレビのUFO特集などで、「捕獲した宇宙人の姿」としてよく絵や写真で登場してきた、痩せっぽちでツルツルで生白い肌で、逆三角形の顔につり上がった大きな眼を持つタイプ。二つめは、全身黒くてチビ、ゴリラをもっとブサイクにしたような顔のやつ(時々、口がおちょぼ口になる)。これらの姿は、実は宇宙人が被っている着ぐるみみたいなものであることが映画の後半で示されるが(本来の宇宙人の姿は顔の一部だけ映るが、それもかなり変だ)、着ぐるみだとしてももうちょっと何とかしろよと言いたくなるレベルだ。

映画は、主人公の小説家ウィットリー(C.ウォーケン)が郊外の彼の別荘で、真夜中に、奇妙な光と不気味な気配を感じたことから始まる。しかし前半は展開が遅く、何が言いたいのか分からない状態が続くためイラつく。わりとどうでもいい感じのシーンが多い。スランプで書けなくなったウィットリーの苦悩を示す場面が続く。主人公の家やライフスタイルがやけにお洒落だ。主人公は小説家なので自宅で仕事をするのだが、ソフト帽を被って小説の構想を練ったりする。

5分の3過ぎたあたりから、急に見どころ満載で面白くなる。恐怖のあまり記憶の底に封じ込めていた宇宙人との遭遇体験を、主人公が催眠術によって思い出していく。その思い出された記憶の中でのウォーケンがすごい。セミヌードになって宇宙人と交流する。さらには宇宙船の壁からニョキニョキ出てきたマイクみたいなぶっとい器具を肛門に入れられ…衝撃的な場面だ。

催眠術から覚めた後は、急に展開が早くなる。子供の頃から何度も宇宙人にアブダクトされて交流してきたことを思い出し、正装して、郊外の彼の別荘に行く。するとそこには宇宙船が。中に入っていくと、例のツルツルとブサイクがたくさんいる。ウィットリーは彼らと旧知のごとく挨拶の儀式をする(急に記憶がよみがえった?)。その後は、いきなり彼らとボサノバ音楽でダンス、ダンス。楽しそうだ。この時のウォーケンの表情と動きが最高だ。魔術師のような格好をしたもう一人のウォーケンが登場して、彼を挑発するが、この場面の意味は謎。

宇宙人との楽しい一夜が明けた後の展開も早い。帰宅すると、「俺は選ばれたんだ」とウィットリー。「その経験を役立てるべきだわ」と彼の妻。そして数日後、「もう小説はやめた。これからは日常を書く。俺たちのことを書くんだ」。喜び勇んでパソコンに向かうウィットリー。「ウィットリーが戻ってきたぞ!ヒャッホー!」。翌朝、「出来たぞ!第一章が出来た!」。…急にすべてがうまくいくように。

映画の最後近くで、なぜかコンテンポラリー・アートの美術館の展示室で、ウォーケンと妻役のクローズが長いキスを交わす場面が挿入される。もちろん絵的には、サマになっているが、あんまり必然性のない場面。その後、ポロックの絵を背景に、ウォーケン扮するウィットリーが、宇宙人の存在について熱弁をふるうシーンが続く。きっとこの場面は、ストレイバーが絶対入れるべきと主張したのだろう。

出演している俳優はみな地味だが演技力があり、悪くないのだが、どうしても映画全体にB級感が漂う。ウォーケンファンは必見の映画だが、正直ウォーケンが出てなかったら、絶対観てないだろーな。

見どころ①宇宙人に会うため、ウィットリーは別荘に一人で出かけることにする。この時、家を出る前にウォーケンが、モスグリーンのシャツに黒のスーツ、黒のソフト帽といキメキメの格好で、軽くダンスする。この時のウォーケンは普通に格好いい。

見どころ②映画の前半部、朝シャワーを浴びた後という設定でウォーケンがキッチンに現れる。いつもの逆立てたヘアスタイルにセットする前の洗い髪の状態が、『デッドゾーン』での、ジョニーが事故に遭う前のヘアスタイルに近い。

いやー、ウォーケンはこの映画の撮影中、何を思っていたのだろうか?もちろんいつものごとく、演技に集中していただろうが、ふと、不安になったりしなかったのか?

とはいえ、デ・ニーロやアル・パチーノだったら絶対出ないであろう映画にも、ひるむことなく(?)出演し、素晴らしい演技で応えるウォーケンは、やはりダントツに面白い存在だ。

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