『ミラグロ 奇跡の地』(1988年)

原題:The Milagro Beanfield War

監督:ロバート・レッドフォード 脚本:ジョン・ニコルズ、デイヴィッド・ウォード

出演:チック・ヴェネラ、ルーベン・ブラデズ、クリストファー・ウォーケン

物語の筋はありがちなのだが、ブタをペット(?)にしてる老人と、その老人にだけ見える精霊の存在のおかげでファンタジックな味わいが出て、牧歌的な雰囲気の「おとぎ話」ふうの映画になっている。

とてもアメリカとは思えないほどのニューメキシコ州のド田舎が舞台。メキシコ系住民がほとんどの村で、しかも老人が多い。前近代的な迷信や慣習がたっぷり残っている閉鎖社会。当然仕事はロクになく、貧しい人間が多い。そんな地域に、開発業者が目をつける。彼らの目的は、住民たちを追い出し、広大なレジャーランドを作ることだった。そんな中、主人公ホセは、涸れきった土地に無断で業者の水路から水を引き、豆畑を作り始める。邪魔に思う業者は州警察からモンタナ(C.ウォーケン)を招き、ホセへの嫌がらせを始めるが、ホセに共感した住民たちの反撃にあって…という感じのストーリー。もう最初の段階で、「いい奴」と「悪い奴」がはっきりしているので、その後の展開も予想できる。「悪い奴」が負け、「いい奴」が勝つ。

正直、こんなに貧しくて地場産業も育ってないような地域なら、豆畑なんか作るよりレジャーランドでも何でも出来た方が雇用も生まれて村も賑わってよかろうに、などと思ってしまう。しかし「先祖伝来の土地」というものに執着のある人間なら、この住民たちの気持ちも理解できるのかもしれない。自分には分からないが。

ウォーケンがどんな冷酷非情な悪役をやっているのだろうか、という期待で観るとちょっと肩すかしをくう。もちろん、人間くさい濃い顔をした村の住民たちとは異質な冷たい顔つきで陰険な策を弄したりはするのだが、主人公と直接対決するのは映画の残り30分くらいから。というより、それまではほんの短いシーンに数回顔を出すだけでほとんど存在感がない。残り30分も、いちおう出番が増えるが、それほど悪辣警官という感じでもない。ウォーケンの演じるキャラクターをあまり非道なものにしなかったのは、レッドフォードの優しさかもしれない。最後はなぜか、「それほど嫌な奴でもなかった」という感じで立ち去っていく。

俳優というのは、本当に「顔」というか「容姿」によってキャラクターをあてがわれていくものだな、とつくづく思う。「内面は顔にあらわれる」なんてことは俳優は信じていないだろう。この映画でも、役柄における「顔」の選び方は絶妙だ。

ところで、牧歌的な雰囲気のこの村の住民でも、何か一大事が起きるとなると老人たちでさえもこぞって銃を手に持ち、ためらうことなく狙いを定める。これがアメリカの現実を映しているのだとしたら、そりゃあ銃規制なんか進まないだろうね。

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