『盗聴作戦』(1971年)

原題:The Anderson Tapes

監督:シドニー・ルメット 脚本:フランク・ピアソン

出演:ショーン・コネリー、アラン・キング、クリストファー・ウォーケン

クリストファー・ウォーケンの映画デビュー作だが、当然この時は無名の新人なので、タイトルバックでのクレジットもかなり後の方、劇場予告版ではクレジットすらされない。だが、セリフもあるし、アップになる場面もある。

主演のショーン・コネリーにとって、ジェームズ・ボンド5作出演後の復帰作となった『ダイヤモンドは永遠に』と同じ年に公開された作品。なので、キャラクターはボンドのイメージを引きずっている。

しかし、役どころは、ジェームズ・ボンドとはほとんど逆の立場といえるかもしれない。ボンドは英国情報部「MI6」に所属するスパイであって、言うなれば「盗聴する側」であったのに対し、この映画でのコネリー扮するアンダースンは、終始盗聴されている側である。しかも悲しいことに、まったくそのことに気がつかず、せっかくの高級アパート強盗計画も失敗してしまう泥棒なので、状況的にあんまり格好よさがない。観てるこちら側は彼らが警察に包囲されつつあることを知ってるだけに、よけい間抜けっぽくみえる。

まあ、この映画の狙いは、緻密な強盗計画の成否うんぬんよりも、国家権力が簡単に盗聴してしまう現代社会を見せることにあるのだろう。

強盗チームの俳優たちは、コネリーとウォーケン以外は知らない顔ばかりだが、個性的なタイプばかりなので、アメリカでは性格俳優として知られている人たちなのかもしれない。特に、守衛のふりをする老人や、ゲイっぽい室内装飾家を演じた俳優、ソックスという変な名前の凶暴な男を演じた俳優の面構えがなかなかいい。

この映画でのウォーケンの役は特に見せ場がある訳でもないが、その演技にはすでに『ディア・ハンター』の演技の片りんが垣間見えている。人種差別主義者のソックスが「黒人がいるじゃないか」と言ったとき、ウォーケン扮するキッドは「いつもは白いんだけどな」と皮肉っぽく返すのだが、その口調は、『ディア・ハンター』の中で、グリーンベレーの男に「激戦地に送られるといいな」と挑発的に言う時の口調を彷彿とさせる。ウォーケンが、「自分は若い時はあまり演技が上手くなかった」と言っていたのでそういう関心もあってこの映画を観たのだが、すでにウォーケンはウォーケンだった、という印象だ。この頃はもうアクターズ・スクールで学んだ後なのかもしれないが。

美しき獲物たち』公開に合わせて出演したトーク・ショーで、「初めてボンド映画を観たのは15年前」というような感じのことを話していたが、ひょっとして、この映画でコネリーと共演するということで観たのだろうか?

ところで、コネリーは当時40歳くらいなのだが、頭髪はもう薄くなってきてるし、日本人の目からは、もっと年上に見える。しかし男っぽさ全開で、ギラギラ脂ぎった雰囲気は確かにまだまだ男盛りという感じだ。こうやって見ると、欧米の俳優のタイプも40年で随分変わったのだなと思う。ダニエル・クレイブは好きな方だが、コネリーに比べるとずっと淡泊なイメージだ。ボンド役がコネリー・タイプの俳優になることはもうないだろう。

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