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『マクベイン』(1991年)

原題:McBain

監督・脚本:ジェームズ・グリッケンハウス 出演:クリストファー・ウォーケン、マリア・コンチータ・アロンゾ、マイケル・アイアンサイド、ヴィクトール・アルゴ

意外にも、繰り返し観るほどに面白さが増してくるB級アクション映画。銃弾・火薬を惜しみなく使って、ドッカンドッカン派手なアクションシーンが連続するのは言うまでもないが、「ありえない」シーンも盛りだくさんだ。

ストーリーは、ベトナム戦争で捕虜になったマクベイン(ウォーケン)が米軍のサントス(チック・ヴェネラ)に助けられたことから始まる。それから18年後、母国のコロンビアに帰ったサントスは独裁的な大統領に対して民主化を求める革命軍に参加するも銃殺される。妹のクリスティーナ(アロンゾ)は兄の遺言を受け、ニューヨークのマクベインを訪ね、協力を求める。マクベインはベトナム時代の仲間を結集し、コロンビアへ。彼らの大活躍もあってクーデターは成功、という単純なものなのだが、この映画の面白さは細部にある。

グリッケンハウスはアクションシーンの派手さや殺害シーンのエグさで有名なようだが、この映画でもそのセンスを遺憾なく発揮。とにかく簡単に人が大量に殺される。また死に方も壮絶。スタントマン大活躍。

冒頭のベトナムにおける捕虜状態の描写は、水牢なんか出てきて『ディア・ハンター』のパロディみたいだ。ウォーケンと仲間が、資金集めのためにニューヨークの麻薬ディーラーのアジトを襲うという展開も、実にスムーズに進んでいく。一応、彼らはカタギのはずなのだが、ギャングばりに手際が良かったりする。ここではウォーケンはまさにギャングのボス(ベトナムからの帰国後の職業は溶接工という設定。仲間は刑事、外科医、ボディガード)。コロンビアに向かうために強奪したプライベートジェットがコロンビア空軍?から制止されると、なんとウォーケンは飛行中のジェット機の窓越しに相手を撃つ(相手の飛行機は墜落)。ウォーケンたちの乗ったジェット機を敵機から守るために、ものすごいハイレベルな操縦術を使って援護したアメリカ人パイロットが、後の場面ではちょっと情けない状況であっけなく爆死。大ケガをしたコロンビア人の少女を、仲間の外科医がアーミーナイフとボールペン?で「手術」(もちろん成功)。ツッコミどころは他にもたくさんある。

ヒロイン役のマリア・コンチータ・アロンゾは、終始ノーブラで、上半身の露出の高い格好でセクシーだ。

配役もツボにはまる。ウォーケンとアイアンサイドは、ともに初期のクローネンバーク作品(『デッドゾーン』『スキャナーズ』)にエスパー役で出演している。ウォーケンとヴェネラは、『ミラグロ』で共演してる(この時はヴェネラが主人公でウォーケンは敵対する側の悪役)。アルゴもこの映画の前年に『キング・オブ・ニューヨーク』でウォーケンと共演しているが、この時はウォーケンはギャングのボスで、アルゴはウォーケンを追う実直な刑事役だったのだが、『マクベイン』ではアルゴは独裁的な大統領役で、ウォーケンが追い詰める側だ。他にもB級映画に詳しい人が観れば、いろんな個性派俳優を発見できるに違いない。

正直、最初に観た時は、あまりに「ありえない」プロットやシチュエーション続出なので、どうしようもない駄作かと思った。ウォーケンの役作りや演技も、この映画に合わないように思ったのだが、観返すうちに、見かたが変わった。きっかけは、やはりウォーケンの演技だ。何しろ、危険な経験をしながらようやくコロンビアに上陸、仲間に指示を与えながら、鼻に日焼け止めクリームを擦り込むのだ!その後の場面では、派手なアロハシャツを着て登場。そもそもスタローンやシュワルツェネッガーなどのマッチョ系アクションスターとは対極にあるタイプだが、この映画でも、まるでニューヨークにいるかのごときクールな佇まいで、コロンビアの民衆たちに混じって戦う。髪型は『キング・オブ・ニューヨーク』と同じ。すごい異化効果。

この映画にはベトナム戦争だの、南米のクーデターだの、シリアスな題材が盛り込まれているので、つい「真面目な」アクション映画かと思って観てしまうのだが、それがいけないのだ。そんな題材は、実のところ大がかりなアクションシーンを盛るための口実みたいなものだ。この映画にはナンセンスな展開やジョーク、ブラック・ユーモアがたくさん入っている。それを個性派俳優たちが大真面目に演じている。これらにツッコミつつ笑いながら観るのが、この映画の正しい観方だ。

アメリカで公開された時、興行成績は大失敗、批評も酷かったらしい。おそらくみんな、スタローンの映画みたいなものを期待していたのだろう。この映画のベトナム帰還兵たちはPTSDとは無縁だし、ロケット・ランチャーは説明書を見ながら操作するし(しかし命中率はやたら高い)、18年ぶりのわりにはウォーケンたちの銃の扱いはやたら手慣れていたりする(ウォーケンは手榴弾を実に軽い調子で投てき)。こういう部分を、破綻や矛盾、チープとして批判するのは間違いだ。なぜならこの映画は、そもそもファンタジーなのだから。

平穏な日常に退屈してたり、現実に幻滅してたりする中年男たちが、18年前の盟友のために、国家の後ろ盾もなく、軍資金や兵器を自分たちで調達し、他国の民主化のためのクーデターに参加する。そして彼らの活躍によって、クーデターが成功する。そういうファンタジー映画なのだ。そういう観方をすれば、面白い娯楽映画だ。

マクベイン クリストファー・ウォーケン LBXS-007 [DVD]