『恋の選択』(1994年)

原題:A Business Affair

監督:シャーロット・ブランドストーム 脚本:ウィリアム・ステイディエム

出演:クリストファー・ウォーケンキャロル・ブーケジョナサン・プライス

いわゆる「女の自立」モノ映画だが、そこに軽いノリの男女の三角関係も盛り込んだラブコメ仕立てになっている。こういうテーマの映画にありがちな説教臭さがないし、ブーケは美しい裸体を惜しげもなく晒してくれるし、ファッショナブルな雰囲気もあり、なかなか楽しい映画だ。フランス人監督がイギリス・スペインで撮影し、おそらく資本はイギリス・フランスあたりだろうか。ブーケはフランスの女優、プライスはイギリスの俳優ということで、言語は英語だが雰囲気は完全にヨーロッパの映画だ。だからなのか、映画の中で主人公のケイト(ブーケ)は既婚者にもかかわらず、わりとあっけなくヴァンニ(ウォーケン)と寝るし、さらに夫のアレック(プライス)は、ヴァンニと別れさせるために闘牛士の若い男に妻を誘惑(ベッドイン含む)するよう、金を渡して依頼する。こういう展開は、まずハリウッド映画では許されないだろう。

ブーケは当時30代後半のようだが、まだ充分美しい。アメリカの女優にはない優雅さと、イギリスの女優にはないしなやかな色気がある。ただし、演技は上手いのかどうか分からない。美人女優にありがちなのだが、表情が大きく変化しないので、自然体ではあるが、あまり感情の表出がみられないのだ。作家志望のモデル、という役柄は彼女の知的な美しさに合ってはいる。

プライスは地味だが、スランプ気味のインテリ作家という役どころを手堅くこなしている。まあ元々エキセントリックな演技をするイメージでもないし、やはりあの独特の目つきは引きつけるものがあるし、会話の場面なんか特に上手いと思う。

この映画のウォーケンは、メインキャストの中で一番目立つ演技をしている。というより、この映画のコメディ要素を一手に引き受けてる感じだ。ヴァンニのキャラクターはかなりエキセントリックで個性が強い。それに加え、ウォーケンがいつもの意外性に満ちた演技力を存分に発揮しているので、彼の出ている場面はとにかく変化に富んでいる。思うに、サイコパスやギャングの役も演技力はいるだろうが、こういう巷の普通の人間を扱った悲喜劇の方が、役者としては演技しがいがあるのではないだろうか。特にアクション映画なんかは、演技力がミニマムですんでしまう。

この映画ではウォーケンはかなりのびのびと自由に演技が出来ているように見える。ダンスのシーンもあり(しかも映画の中でわりと重要な意味を持っている)、プライスやブーケとの感情的な駆け引きのあるやりとりや、コミカルな動きや言い回しなど、彼の持ってる演技のスキルを存分に生かしてる。監督はまだキャリアの浅い若い女性監督だったようだし、ウォーケンの方からいろいろ演技上の提案が出来たのではないだろうか。

ただ残念なのは、この映画はアメリカでは一年遅れの単館上映だったらしいし、イギリス・フランスでもさほど興行的にふるっていないようだ。アメリカで全く話題にならなかったということは、ウォーケンにとっては残念なことだ。こういう演技が出来ることがもっと周知されていれば、その後オファーされる役もだいぶん違っていただろう。老人になってからは、むしろコメディばっかりのようだが(本人は「サタデー・ナイト・ライブ」にたくさん出演したことが関係していると分析している)。

結末を単純なハッピーエンドにしていない、曖昧なままで終わらせているところも、きわめてヨーロッパ映画的だ。

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