『グリニッチ・ビレッジの青春』(1976年)

原題:Next Stop, Greenwich Village

監督・脚本:ポール・マザースキー 出演:レニー・ベイカー、シェリー・ウィンタース、エレン・グリーン、クリストファー・ウォーケン

しばしばアメリカン・ニューシネマのカテゴリーで紹介されてきた映画だが、内容的にはアメリカン・ドリームを目指す青春群像もの映画という印象だ。しかし、やはり描かれた若者像はアメリカン・ニューシネマっぽい刹那的な雰囲気も漂わせていて、時代設定の1953年よりも、映画が作られた1976年の空気感がある。

主演のレニー・ベイカーは典型的なユダヤ系の容姿で、演技も舞台演劇的で、かなりクドイ。歯並びが悪く、セリフをりきんで言う時に口元が歪むので、観客としてはこの主人公がハリウッド映画でスターになることはないだろうと想像できる。そういう意味では、映画俳優を目指すも挫折したマザースキー監督自身が投影されたこの映画の役柄には合ってるのだが、あまりにも華がないので主役として見続けるのはキツイものがある。とはいえ、アメリカ的ハンサムとは程遠いタイプであることが、ある種アメリカン・ニューシネマらしくもある。英語版のウィキによれば、ベイカーはこの映画の6年後に37歳の若さで亡くなっている。公式的には死因はガンと発表されたが、実はエイズが原因だったとの暴露話が後で出てきたようだ。

シェリー・ウィンタースが、相変わらず「ウザイ女」を見事に演じ切っている。『陽のあたる場所』(1951年)『狩人の夜』(1955年)『ロリータ』(1961年)と、ウィンタースといえば、いつも男がイラつく「うっとおしい女」の役で登場するイメージだ。これらの作品では、うっとおしさが高じて?邪魔に思った男から、終いには殺されてしまう。まあこの映画ではさすがにそれはないが、かなりの「ウザイ母親」ぶりだ。しかしその演技にはユーモアがあり、やはり大した女優なのだなと思う。

エレン・グリーンは、化粧のせいもあってかレディー・ガガに似てるように見える。美人でもかわいくもないが、個性的でアヴァンギャルドな魅力がある顔立ちだ。下着姿の場面での突き出した胸の大きさには驚く。

ウォーケンは作家志望のプレイボーイの役で、何しろベイカーの容姿がぱっとしないので、美青年ぶりは際立っている。セリフもそれなりにあり、メインキャストの一人なのだが、人物背景もほとんど不明だし、何を考えているのかよく分からないキャラクターなので、観客としては親近感はもちろんのこと、好感・共感も持ちようがない。しかし劇中、「うぬぼれや」「見かけ倒しで中身がないやつ」といった感じの言葉を、仲間からぶつけられるシーンがある。この時のウォーケンの表情がいい。まさに、「痛いところを衝かれたが、表面上はそれを気取られないようにとり繕っている」表情をするのである、微妙な目と頬の動きによって。つまり、これが映画の演技ということなのだろう。

この映画はやたらアメリカの批評家(おっさん)からの評価が高いようなのだが、映画製作時の1976年に若者であった人間(団塊世代から少し後くらいまでの世代か)にとっては、同時代感がある映画なのかもしれない。しかし映画の中のニューヨーク・ブルックリンは1950年代の牧歌的な街並みであり、不思議な雰囲気に仕上がっている。

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