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『戦争の犬たち』(1980年)

1980年代 アクション サスペンス

原題:The Dogs of War

監督:ジョン・アーヴィン 原作:フレデリック・フォーサイス

出演:クリストファー・ウォーケントム・ベレンジャー、ジョベス・ウィリアムズ

いちおう戦争映画だが、傭兵が中心になってアフリカの小国でクーデターを起こす話なので、国対国の戦争よりは戦いの規模はずっと小さい。しかし銃弾・火薬は景気よく使っているし、ランチャーなど兵器マニアが喜びそうな銃火器がいろいろ出てくるので、戦闘場面に関してはそれほどチャチではなく、見ごたえがある。

『マクベイン』を観た後にこの映画を観ると、つくづくあの映画はこの『戦争の犬たち』をかなり意識して作ったのだということがよく分かる。まあ『マクベイン』はそもそも映画全体がパロディ、ジョークみたいなものだった。一方、元ネタ?であるこちらの映画の方は至って真面目、ジョークなしのシリアス映画だ。

原作のある映画は、どうしても原作ファンからの酷評を受けやすい。この映画も、やはり“映画的都合”からかなり原作を翻案しており、省略された部分も多いため、フォーサイスのファンからは評価が低い。しかし原作通りに作っていたら、おそらく上映時間は二時間じゃ済まないだろう。

問題は、銃弾・火薬・銃火器に予算をふんだんにあてた結果か、それ以外の部分がチープになったことだろう。セットにお金が掛けられていないのが目につく。これは低予算映画の宿命だ。

まだ30歳頃のトム・ベレンジャーが、傭兵仲間として登場。6年後の『プラトーン』では大きな傷あとのメーキャップですっかり強面イメージになったが、この映画では明るい目をした飄々とした雰囲気の青年だ。悪役俳優になってしまったのは残念。

この映画でのウォーケンは30代後半という若さの上、かなり痩せているので線が細くみえる。傭兵らしくないという批評もあるが、この映画の傭兵は自分たちで立案・計画・武器の調達なども行うので、かなり知力が要求される。スタローンやシュワルツェネッガーじゃないが、いかにも筋肉マッチョなタイプも違和感あるだろう。それなりの迷いや葛藤を抱えており、金で雇われた傭兵とはいえ、やはり人間として許せないものがあれば、最後には毅然と抵抗する。こういう複雑なキャラクターを、微妙な表情でクールに演じている。ウォーケンの実際の性格とはかけ離れたキャラクターだと思うが(本人は銃を見るのも触るのも嫌いらしい)、とりあえず悪役でないところはいい。

ところで、ウォーケンは紙をめくる時(本のページや紙幣など)に、指先をペロッと舐める演技を必ずするのだが、クセなのだろうか。この映画では、部屋の壁のゴキブリを手でバシッと叩き潰すショット(手のアップ)のあと、指をペロッと舐めて郵便物を選り分けるシーンが続く(カメラのアングルはまったく違うので、連続的動作ではない)。まあ撮影時は別々に撮ったであろうし、まさか現場では「クリス、このシーンはゴキブリを潰した手を舐めるんだ」という指示があったとも思えないが、結果としてはやたらと強烈に印象に残る場面だ(事実、この部分に言及したレビューも多い)。

戦闘シーンにおけるウォーケンの思いっきり見開いた目が、戦争における異様な興奮状態を表現していて迫力がある。

戦争の犬たち [DVD]