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『ウォーゾーン 虐殺報道』(1986年)

1980年代 サスペンス

原題:Witness In The War Zone(Deadline)

監督:ナサニエル・ガトマン 脚本:ハナン・ペレド

出演:クリストファー・ウォーケン、ハイウェル・ベネット、マリタ・マーシャル

中東問題は殆ど理解していないので内容にはあまり踏み込めないのだが、1982年9月にベイルートのサブラ・シャティーラ難民キャンプで起きたイスラエルによる大虐殺をモチーフにしているようだ。

しかし製作はイギリス・西ドイツ・アメリカ・イスラエルとなっているので、映画のスタンスとしてはアメリカ=イスラエル寄りなのだろうと思う。が、登場人物の描き方や最後の虐殺場面などをみると、必ずしもイスラエルだけ正当化しているという感じでもなく、結局のところ「どっちも悪い」「どっちにもそれぞれ理がある」的などっちつかずの印象だ。まあ現実をいろいろ掘り下げれば、曖昧模糊とした描き方になってしまうのは分かるが。

アメリカのTVレポーターのスティーブンス(ウォーケン)は、レバノンでの戦闘の取材のため現地にやって来たのだが、取材は現地採用のカメラマンにやらせて、自分はホテルで酒を飲んでダラダラ過ごし、あり合わせの映像に月並みなナレーションを被せてTV局に送ったり、やる気のないやっつけ仕事で済ませていた。だが、突然PLOの幹部ヤシンの独占インタビューの話が持ち掛けられる。スティーブンスは別にPLOに思い入れもないのだが、「PLOは和平交渉を望んでいる」というインタビューを撮ったことで、スクープをとったジャーナリストという立場になる。しかし実はそれはニセモノによって仕掛けられた罠だった。プライドを傷つけられたスティーブンスは、身の危険も顧みず、ことの真相究明にのり出す…。

で、こうしたストーリーに、イギリス人ジャーナリスト(ベネット)や元スパイのスカンジナビア出身の美人医師(マーシャル)や、パレスチナ難民の女子供や、ちょっとでも不審人物であれば情け容赦なく射殺するPLO兵士など、諸々の人物が絡んでくるのである。

ウォーケンのキャリア前期の出演作の中でも、彼が主人公や主要なキャストを務めたものはマイナーな作品が多いが、この映画は特に「存在が忘れられた」感が強い。1980年代は、この映画のように欧米のジャーナリストが紛争地帯に取材に行き、苛酷な体験をするプロットの映画が流行っていたようだ。IMDbには、同じようなプロットの映画として『サルバドル/遥かなる日々』(1986年)や『キリングフィールド』(1984年)、『遠い夜明け』(1987年)などのタイトルがあげられている。

だがこの映画の監督は、オリバー・ストーンリチャード・アッテンボロー、ローランド・ジョフィに比べると演出があっさりしているというか、全体的に散漫な流れだ。脚本のせいもあるかもしれない。全然ダメというほどではないが、正直、ウォーケンが主役として全編にわたって出ていたから興味深かったものの、映画そのものは弱い。最後のショットを絶望した表情の難民の子供の顔のアップで終わらせたのは悪くないが。

ウォーケンの演技は相変わらずクールで意外性に富んでいる。普通の俳優なら絶叫したり、感情をあらわにしたりするような場面でも、彼はそういう演技はしないのがいい。この映画でのウォーケンの役は、実はけっこうヒーロー的な役回りだ。最初こそやる気のない軽薄な態度なのだが、途中からは女性医師と子供をPLO?から逃すために、自分の身体を張って危険なこともする。しかしいかにもヒーロー然とするのではなく、最後までクールでシニカルなジャーナリストとして演じている。欲を言えば、脇役に、もう少しクセのある俳優が欲しかった気がする。

Witness In The War Zone