『流血の絆』(1992年)

原題:Le Grand Pardon II(AKA:Day of Atonement)

監督:アレクサンドル・アルカディ 脚本:アレクサンドル・アルカディ、ダニエル・サンタモン 出演:ロジェ・アナン、リシャール・ベリ、ジェラール・ダルモン、クリストファー・ウォーケンジェニファー・ビールス

マイアミを舞台にした、ユダヤ系フランスマフィア一族の野望と愛憎を描いたフランス映画。内容は『ゴッドファーザー』風だが、画面に重厚感はなく、低予算映画の雰囲気。

この映画はフランスマフィアのボス・レイモンを演じたフランス人俳優のアナンが主役である。そしてその息子モーリス(ベリ)の野望と挫折を中心に話が進んでいく。

やはり、マフィア/ギャング映画にかけては、アメリカ映画のほうが見せ場の作り方やキャラクターの造形など、こなれているものが多い気がする。この映画は実在のマフィアをモデルにしているらしいのだが、いまひとつ盛り上がりに欠けるというか、意外性がない。主役の俳優にもっとカリスマ的魅力があればいいのだが…。ベテランの風格はある。モーリス役の俳優は、アル・パチーノやデ・ニーロに比べると、少し地味だ。

ウォーケンは四番手ぐらいの役どころである。彼の役は麻薬カルテルを牛耳るギャングのパスコである。モーリスが、密輸予定のコカインを取引するためにパスコの広大な屋敷を訪れたところで、ようやくウォーケン登場。既に映画開始から40分ほど経過している(もしかしてカメオ出演かと不安になってくる頃である)。

この映画のウォーケンは完全に悪役である。まあ、この映画の登場人物はほとんど全員ギャングなのでそういう意味では悪役ばかりなのだが、ウォーケン演じるパスコは特にひどい。冷酷非情で女性蔑視者でユダヤ人嫌い、しかも父親はチリに逃げたナチスの残党らしいことが会話でほのめかされる。まさに、メインキャストのマフィア父子を引き立てるための役どころだ。

だが、それでもウォーケンの演技は相変わらず個性的で、このどうしようもない役にさえ、面白味を与えている。パスコはドッグレース用の獰猛な犬を多数飼育しているのだが、餌やりの際に犬の餌(ミンチした生肉?)をまず自分の口に放り込んで味見するのだ。こんなことするのはウォーケンくらいだろう。レストランでのレイモンとのやり取りもいい。陽気に振る舞いながら相手を愚弄するというパスコの陰険な性格を、鮮やかに演じている。

ジェニファー・ビールスが、モーリスの恋人のカタギ女性の役で出演している。『フラッシュ・ダンス』以来、TVドラマ『Lの世界』(2004年)で再ブレークするまで役に恵まれなかったイメージだが、アメリカの女優としてはかなり美貌を保っている方なのは間違いない。この映画の頃はまだ20代末頃か。主要なキャラクターの一人ではあるが、あまり印象的な役柄ではない。ギャング映画は女優が活躍しにくいジャンルだ。

レイモンに復讐しようとひそかに策略を図る従弟の役を、ジェラール・ダルモンというフランスの個性派俳優が演じているのだが、この俳優の顔がかなりアクが強い。白髪っぽい頭髪のせいもあって当時60近いのかと思ったら、ウォーケンより5歳も若かったからひっくり返りそうになった。

Le Grand pardon II [VHS] [Import]