『ラスト・マップ/真実を探して』(2004年)

原題:Around the Bend

監督・脚本:ジョーダン・ロバーツ 出演:ジョシュ・ルーカスクリストファー・ウォーケンマイケル・ケイン、ジョナ・ボボ

父親と息子」の関係をテーマに、祖父・父・息子・孫の男系四世代の葛藤・理解・愛情を描いたヒューマン・ドラマ。映画の中心となるのは、ジョシュ・ルーカスが演じる銀行員ジェイソン(30代後半くらいの設定か?)。ウォーケンはその父にあたるターナー役、マイケル・ケインはジェイソンの祖父ヘンリー役である。ジェイソンの息子を6歳のボボが演じている。

ウォーケンとマイケル・ケインの共演に興味があり観た映画だが、ケインは最初の20分間しか出ていない。しかし二人が直接絡む場面もあり、二人が親子という設定はやや違和感あるものの(実際10歳程度しか年齢差がないせいもあるが、何よりウォーケンの顔の皺がかなり半端ない)なかなかいい場面になっている。

不肖の息子ウォーケンが突然現れ、その帰宅を喜色満面で迎えるケインの表情がとてもいい。実はケインの演じるヘンリーは一番とらえどころのない不可解な人物なのだが、場面場面でのケインの表情に実に味があり、いかにも現実の人物らしく見せている。

ウォーケンとケインはどちらも名優で個性派、しかも出演作を選ばない多作の俳優という点で共通している。しかしあらためて二人を共演という形で観ると、俳優のタイプの違いがかなりはっきり見えてくる。

基本的に、ケインは演じられる役の幅が広い。ここで言うのは演技力の問題ではなく、ビジュアルの問題として、ケインの顔立ちや雰囲気は、いろんな役に馴染みやすい。もちろん「大物感」のある顔なので、セコイ小人物なんかは似合わないだろうが、監督からみて様々な役で使える俳優だろう。

ウォーケンの方は、悪役やサイコパスタイプキャストされ続けたせいも大きいが、彼の容姿が醸し出す一種独特の雰囲気はかなり強烈なもので、どうしても何らかの形で「異常性」を帯びた役柄でないとフィットしにくい。実際、かなりヒューマン・ドラマが強調されたこの映画でも、彼の役柄は元ヤク中の窃盗犯(で服役中)、30年間息子をほったらかしていたという設定だ。

ウォーケンは“しょぼくれた負け犬オヤジ”の役を、無精ひげにヨレヨレの服、老け込んだ表情など、やさぐれた雰囲気全開で演じている。役柄は異常だが、演技は全体的に抑制されており、オーバーアクションは一切ない。 ヘッドライトに照らされて激しくダンスするシーンが一ヵ所あるが、そこでの打って変わった“パンク”なはっちゃけぶりがいい。映画の進行につれて、しょぼくれていた容姿が、徐々に派手で生き生きした様子になっていく。

ルーカス、ボボも演技が上手い。ボボは日本の子役に比べると比較にならないほど自然体の演技だ。主要キャラクターを演じた4人の演技力のおかげで、「父子の和解」という、ともすればクサくなりがちな映画の内容も、さらっとしたものになっている。

監督のコメンタリーを聴くと、悪役イメージが染みついているゆえにウォーケンを起用したようだ。しかしよくよく聴いてみると、実は監督自身の父親との関係がこの映画の基になっているようである。実際、ターナー役に対する思い入れの強さを感じさせる。映画の最後でターナーとジェイソンが到達する穏やかな和解は、ロバーツ監督にとって、自身が築くことができなかった父親との関係をやりなおす、一種の代償行為でもあるのだろうか。映画が深刻になりすぎないように、トボけたユーモアを随所に挿入しているところに、この監督の繊細さを感じた。

ラスト・マップ / 真実を探して 特別版 [DVD]