『デンバーに死す時』(1995年)

原題:Things to Do in Denver When You're Dead

監督:ゲイリー・フレダー 脚本:スコット・ローゼンバーグ

演:アンディ・ガルシア、ガブリエル・アンフォー、クリストファー・ウォーケンクリストファー・ロイドスティーヴ・ブシェミトリート・ウィリアムズ

地方都市デンバーを舞台に、ギャングのボスから請け負った仕事を失敗したために「血の処刑」を言い渡されるハメになった、元ギャングの男たちの様々な生き様と死に様を描いた映画。デンバーを舞台にしているが、ニューヨーク・インディペンデント系映画である。アンディ・ガルシアが、元ギャングで、現在は遺言ビデオ制作の会社を経営する主人公ジミーを演じている。

この映画の良さは、登場するキャラクターがそれぞれ個性的で、それを演じる俳優たちが魅力的なところだ。ガルシアもいいのだが、それ以上に脇を固める俳優たちが皆すごくいいのである。

落ちぶれて現在はポルノ映画の映写技師で糊口をしのいでいる元ギャングのピーシーズを演じるのはクリストファー・ロイド。ロイドというと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドク役のイメージが強いが、この映画では初老の男の侘びしさと、過去に対する密かな矜持を感じさせる渋い演技がいい味を出している。

トリート・ウィリアムズは、頭がイカレてるうえ、やたら暴力的でキレやすい元ギャングのビルをエキセントリックに演じていて、気持ち悪さと間抜けさが共存する絶妙かつ爆笑の演技だ。

殺し屋「ミスター・シー」を演じたスティーヴ・ブシェミがまたいい。青白い顔にひょろひょろした体型、戸惑ったような情けない顔つき、重みや凄みのない高い声。なのに凄腕の殺し屋なのである。ターゲットの前に現れた時、彼のひょろっとしたシルエットが薄暗い中に浮かび上がる。そんな体格のくせに素手でいきなり四人殺したり、銃も百発百中の腕前だったりする。ブシェミは“映画の中でよく殺される俳優”として有名だが、もちろんこの映画でも死ぬ運命だ。薄気味悪いくせに面白くもあるというブシェミならではの存在感がいい。

パーラーに一日中居座っては、若者相手にギャングの世界の話をする老人ヘフをジャック・ウォーデンが演じているのだが、このヘフの存在がなかなかうまい。ストーリーテラーとして彼が映画の最初と最後に同じ話をすることで円環がつながり、この映画がヘフの昔語りであったことがわかる仕掛けになっている。こうした構成はちょっとパルプフィクションを思わせる。他にも、「遺言ビデオ」という風変わりな小道具を、時間構成的にうまく活かしている。他の人のレビューには、タランティーノ風とかコーエン風などという評もあったが…、タランティーノほど饒舌ではないし、コーエン兄弟よりも通俗性がある(もちろん悪い意味ではない)。

暴力や殺戮場面は多いのだが、暗さやシリアスさだけではなく、けっこうコメディ的な要素も入っていて軽さもある。

ウォーケンが演じた車椅子のギャングのボスがまた秀逸なキャラクターだ。首から下は完全麻痺状態で、指ひとつ動かせない。車椅子を移動させる時には、ストローのような管を咥えて息を吐いて車椅子を動かすのだ。身体が動かせないので、表情やセリフだけで演技するしかないが、笑顔で下品な言葉を吐いたり、相手を平然と侮辱したりする時の残酷な表情には引き込まれるものがある。こんな凄みと怪奇な雰囲気を醸し出せるのは彼しかいないだろう。

キャラクターとしては、『ワイルド・サイド』(1995年)のブルーノに近いが、ブルーノよりも陰気で陰湿、残酷な性格だ。それでいて、健康だった頃の回想シーンなんかでは唐突にお茶目なダンスを踊っていたりする。つまり、シリアスさとコメディ的な部分が入り混じった極端なキャラクターなのだ。しかし、この映画そのものが、シリアスさとコメディが入り混じったつくりになっている。声をあげて笑うようなコメディではないが、トボけた可笑しみみたいなものがあるのだ。

ガブリエル・アンフォーは、美女というより美少女といいたくなるような瑞々しさ。ただし、彼女がセリフを言うとちょっとがっかりさせられる。表情だけの演技だとすごくいいのだが。

ヤク中の娼婦を演じたフェアルザ・バルクの方が印象的だ。『アメリカン・ヒストリーX』でも似たようなビジュアル(パンクとゴスが混じったようなファッション)で、やっぱりイカれた感じの役だったが、この映画の役の方がはるかにいじらしい性格。

映画の結末はかなり暗く陰惨なのだが、重く終わらないように、ファンタジックなシーンで終わらせているところがいい。その明るいシーンが、かえって涙を誘う。知られざる秀作。

デンバーに死す時 [DVD]