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『サーチ&デストロイ』(1995年)

1990年代 インディペンデント コメディ

原題:Search and Destroy

監督:デヴィッド・サーレ 脚本:マイケル・アルメレイダ

出演:グリフィン・ダンデニス・ホッパー、イリーナ・ダグラス、クリストファー・ウォーケンジョン・タトゥーロ

ウォーケンの“天才”を再確認させてくれる映画。

監督のデヴィッド・サーレは美術家で、映画はこれしか撮っていないようだが、いかにもアート系インディーズ映画らしい実験的な作品。いちおうプロットは、グリフィン・ダン扮する主人公が、借金返済と事業の立て直しのために映画制作を思い立ち、資金繰りに奔走するといったものなのだが、この映画をアルトマンの『ザ・プレイヤー』(1992年)のような映画界や映画制作の裏側を描いたものと予想すると、まったくあてが外れることになる。

サーレ監督の関心は、極端な「奇妙さ」にフォーカスをあてて見せることにあるのではないだろうか。やたらと奇妙な人々が次から次に登場し、彼らが繰り広げる予想外の行動がどんどん物語を奇妙な方向に転がしていく。そしてあっけにとられる結末。物語のリアリティとか整合性は、端から無視していると言っていい。

キャスティングされた個性派俳優たちが素晴らしい。ホッパー、ウォーケン、タトゥーロが一つの映画の中で観れるだけでもワクワクする。ケーブルTVで怪しげな自己啓発論みたいなのを演説しているカリスマ伝道師役のデニス・ホッパーは胡散臭さ満載で、もちろんいい。だが、ウォーケンとタトゥーロの個性的な演技が特に際立っていて強烈だ。

タトゥーロは、あの顔にチリチリカールのロン毛というかなり暑苦しいビジュアルで登場し、早口でまくしたてるロンというキャラクター。いったい何を生業にしてる人物なのかいまいちよく分からないが(裏稼業に精通しているようだが)、とにかく彼が出てくるとその見た目と演技のクドさに笑える。ズラを外す場面はあっけにとられると同時に爆笑。ウォーケン演じるキムとのやり取りの可笑しさは絶妙だ。おそらくこの二人の間には、演技が上手い俳優どうしだからこそ成立するような“あうんの呼吸”があったに違いない。正直、この二人とグリフィン・ダンの三人の場面では、あきらかにダンだけ演技レベルが若干劣る。逆に言えば、タトゥーロとウォーケンがハイレベル。

ウォーケンの見どころはいろいろあるが、一番目立つところでは、日本料理レストランでいきなり歌い踊り出す場面だろう。アメリカ映画にありがちな変な日本趣味のセットや踊り子がいて、日本人としては若干モヤモヤした気分にもなるのだが、ウォーケンが素晴らしいのでまあ許すとしよう。

ウォーケン扮するキムがコカインを吸った後、ラリっておかしくなってしまう演技も素晴らしい。並の俳優だとラリってる演技はいかにも「俺はラリってるぜ~」といった感じのオラオラ系になるのだが、ウォーケンの場合は、「何とな~くおかしい…ような?でも大丈夫そうに見えるし…やっぱちょっと変かな?」と観客が感じるぐらいの、実に微妙な演技をするのである。この演技ひとつとっても、彼が非凡な才能の持ち主であることは疑いない。

イリーナ・ダグラスは美人というにはアクが強すぎる顔立ちだが、さすが映画界のサラブレッドだけあって、あか抜けた雰囲気はある。個性派ぞろいのこの映画では、一般受けはしなくとも、彼女くらい強い存在感がないと逆につり合いがとれないかもしれない。

美術家の監督だけあって、画面に映し出される絵画のセレクションや色のセンスはいい。突然、意味不明な実験的映像になるところもけっこう面白い。マニアックなわりに、意外と繰り返し観て楽しめる映画。

サーチ&デストロイ [レンタル落ち]