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『隣のリッチマン』(2004年)

2000年代 コメディ ファンタジー

原題:Envy

監督:バリー・レヴィンソン 脚本:スティーヴ・アダムス

出演:ジャック・ブラックベン・スティラーレイチェル・ワイズクリストファー・ウォーケンエイミー・ポーラー

職場も同じ、家も近所の親友・ニックとティム。ニックが犬のフン消しスプレーを発明して大金持ちになってしまい、それにティムが激しく嫉妬したことから巻き起こる騒動…というコメディ映画。ジャック・ブラックベン・スティラーが共演、と聞くと、かなりこってりしたコメディになるかと思いきや、あまり爆笑する間もなく終了する。どうも、ジャック・ブラックがこの映画の役柄に合ってないような気がするのだが…。

ドナルド・トランプが好みそうな成金ぽい豪邸をかまえたり、乗馬をしたり、庭にメリーゴーランドを作ったり、とにかく超リッチな暮らしをしている金持ちになっても性格は素直で素朴なままで、嫉妬に執りつかれた親友ティム(ベン・スティラー)の悪意にもまったく気づくことなく親切な気持ちでいっぱい…という「人の好い」キャラクターが、どうもしっくりこない。ジャック・ブラックって、アメリカじゃそういう「いい人キャラ」で通ってるのだろうか?

スティラーの方はイメージと役柄は合っているのだが、演出が中途半端なのか、笑いも中途半端。ストーリーから期待したほどの毒気もなく、最後は「やっぱりお金より友情が大切」って教訓めいたオチのつけ方だ。監督のレヴィンソンは万人向けを狙ったのか、単にコメディ演出がイマイチなのかわからないが。

レイチェル・ワイズがこんな映画に出てたとは…。最初の方の所帯じみた姿はぱっとしないが、後半、ドレスアップした姿は艶やかで美しい。周りから浮かない演技で悪くはないが、知性的な顔立ちの彼女は、こういうおバカ映画ではちょっと苦しい。逆にエイミー・ポーラーの方は(別に彼女がバカっぽい顔なわけでもないが)いい感じだ。

ウォーケンはJ.マンというホームレスっぽいおっさんの役。もつれた長髪に古ぼけた洋服、いかにも底辺労働・危ない労働いろいろやってきたらしい負け犬臭が濃厚に漂うキャラクターだ。で、このJ.マンはティム(スティラー)に、成功者ニック(ブラック)を陥れるための悪知恵を吹き込んだり、ティムを翻弄して彼を窮地に陥らせたりと、かなりブラックな存在だ。しかし結局のところ、J.マンがティムを脅迫したことがきっかけで、ティムはニックに自分の正直な気持ちを告白することになり、二人の友情は復活することになる。

映画の最後の方まで観て分かってくるのだが、このJ.マンは嫉妬に執りつかれたティムの目を覚まさせるために現れた「妖精」か「精霊」かわからないが、何か人間ならざる存在のようなのだ。そうしたことをあからさまに示すシーンはないのだが、ひどく謎めいたキャラクターであるし、彼が登場してから非現実的なことが多く起こる。おまけにアーチェリーの矢(おもちゃのようなものではあるが)が背中にぶっすり突き刺さっても、全く痛がる様子もない。そうした「人間ではない」非現実的なキャラクターは、ウォーケンがよく演じる役どころである。最後に走り去っていくときのコミカルな走り方もいい。ウォーケンの演技が、このちょっとヌルくタルい感じのコメディにファンタジックな要素を付け加えている。

それにしても、この映画における「成功」の定義は、日本とアメリカの価値観の違いをよくあらわしている。ティムとニックはともにアメリカの大企業3M(スリー・エム)の社員なのだが、会社ではティムの方が出世している。組織の一部として働くことに向いていないニックは犬のフン消しスプレーを開発し、TVショッピングで宣伝しまくって大きな収益をあげる。やはりアメリカの場合、独立・起業して経済的成功を収めることこそが最高の社会的成功なのだ。もちろん日本でも、起業して結果的に大金持ちになれば成功者とみなされはするが、一般人の多くは自分でビジネスを始めるよりも、大企業に就職することの方を目指すし、そちらを社会的成功とみなすことが多い。こういうシチュエーションの映画は日本では作られそうにないし、そもそも日本人には「金儲け=悪」という価値観があったりするので、こんなふうに経済的成功を無邪気に肯定するストーリーの映画はウケないだろう。

郊外に暮らす白人中流家庭の暮らしぶりが垣間見えるところが、なかなか興味深い。

隣のリッチマン [DVD]