『メン・イン・キャット』(2016年)

原題:Nine Lives

監督:バリー・ソネンフェルド 脚本:グウィン・ルーリー、マット・R・アレン、ケイレブ・ウィルソン、ダニエル・アントニアッツィ、ベン・シフリン

出演:ケビン・スペイシージェニファー・ガーナークリストファー・ウォーケン

仕事人間の大企業社長トム(スペイシー)は、誕生日の娘のために、不思議なキャット・ショップで猫を購入する。その猫を連れ帰る途中に立ち寄った会社で、会社乗っ取りを企てる部下と格闘した際に自社ビルの屋上から猫とともに落下、気が付くと意識が猫の中に閉じ込められていた。猫として過ごすうちに周囲の人々の本当の姿に気づいたり、自分の生き方を反省したりする…という展開のコメディ映画。

日本が「猫ブーム」でなければ、おそらく劇場公開されなかっただろう映画。とはいっても、セットやCGなどはチープな出来映えではない。むしろ予想していたよりも良作。特に色彩設計が美しく、屋外シーンも室内シーンも曇りのない明るいトーンの色が使われており、この映画のファンタジー性を強調する効果になっている。

ストーリーの中心となる猫はサイベリアンという品種で、プーチンから秋田県知事に贈られた猫と同じ品種らしい。長毛で身体が大きく、猫だから全体としては可愛いのだが、表情が泰然としてて、モッサリして愛嬌がない。どちらかというと不機嫌そうに見える顔つき。まあ、ゴーマンな中年男(スペイシー)の意識が乗り移ってる状態、というシチュエーションには合ってるとも言える。CGでむりやり猫の表情をコミカルにしたりするようなところがなかったのは良かった。

ケビン・スペイシーは何ゆえこの映画に出演しようと思ったのか?!という疑問は置いておくとして、この映画がターゲットにしている観客層というのがいまひとつ不明だ。人間関係や会社の乗っ取り話やらがけっこうドロドロした現実的な内容で、ファミリー向け、という感じでもない。かといって大人が観るにはファンタジー色が強く、ストーリー展開も予想通り。まあ、それなりに楽しめたが…。

ウォーケンはキャット・ショップの店主の役。この店主が不思議な力(魔法?)を持っていることが様々な場面で暗示される。つまり、またしても「普通の人間ではない」キャラクター。この映画の中でのウォーケン扮するフェリックス・パーキンスの役割は、『隣のリッチマン』におけるJ.マンとよく似ている。目先のことに囚われて大切なものを見失っている主人公に近づき、トラブルの中に巻き込んで翻弄する。主人公は右往左往しているうちに、自分にとって本当に大事なことは何かということに気がつき、これまでの自分を反省するのだ。得体の知れない怪しい人物なのだが、結果的には主人公を正しい方向に導くきっかけを作る。

実際のウォーケンはとてもいい人らしいから、ギャングのボスやサイコパスよりも、こういう愛嬌ある役柄の方が本来の彼に近いのだろう。ウォーケンは大変な猫好きで、これまでに作られたほとんどの猫映画?を観てるらしい。そういう意味では、この映画に出演したことも納得できる。

NINE LIVES